コトナル#008 閒-あわい-のメールマガジン
・「壁」にふれる、「壁」をこえる
・前髪が決まらない
・不格好さを取り戻す
こんにちは。「コトナル」編集部です。
寒い日と暖かい日の落差が激しい2月でした。三寒四温だなぁなどと呑気に言ってられないぐらい寒い日もありましたが、しかしもう、春はすぐそこ、なのでしょう。
「コトナル」について
コトナルー異なる/個となる/孤となる/co-となる(協働)/隣る の言葉遊びで名付けました。固有の身体を持つ私たちが、異なり合いながら重なり合う、小さく新しく多様でありながら広く旧く普遍である、そんな物語を掬って紡いでいけたらと思います。
創刊のあいさつのようなもの:「あなたに手紙を」
発行者:株式会社閒(あわい)・鈴木悠平
配信日は、毎月第1土曜日の13時です。これを読んでくださっているあなたのご感想やご質問、企画の持ち込みやリクエストも大歓迎です。
2024年3月の短歌(佐藤和代)
作:佐藤和代
いちばんに大切なものをいちばんに忘れてしまう不便なこころ
「壁」にふれる、「壁」をこえる―第2回刑務所アート展(鈴木悠平)
仲間と共に取り組んでいる「刑務所アート展」というプロジェクトを紹介させてください。
「刑務所アート展」は、全国各地の刑務所で服役する受刑者からアート作品を募集して企画展を開き、審査員および展示会場やWebギャラリーで作品を観た人のコメントを、応募した受刑者に返すことで、「壁」で隔てられた刑務所の内と外の交流をつくりだすプロジェクトです。
「第1回刑務所アート展」を2023年2月に初めて開催し、全国の受刑者から文芸作品を公募して展示したほか、2人の死刑囚の絵を展示しました。
そして、来る2024年3月22日〜30日に、東京・北千住にあるギャラリー「BUoY」にて、「第2回刑務所アート展」を開催します。
12月〜1月にクラウドファンディングを行い(ご支援くださった方、ありがとうございました)、2月に作品審査会を実施し、現在、展示・カタログ制作・Webサイトの準備を進めています。
東京で実施した作品審査会の様子
大阪で実施した作品審査会の様子
罪を犯し、法のもとに裁かれ、刑務所で服役する人たちは、もちろんその行為に対する償い・更生の責任を負うことになりますが、私たちと同じ一人の人間であり、刑務所に入るに至った経緯や背景もさまざまです。服役中の日々、どんなことを考え、誰に何を伝えたいと思い、どんな表現をするかも、もちろん、受刑者一人ひとり異なります。刑期を終えて出所した後にも、一人ひとり違った人生が待っています。
しかし、刑務所という、制度的・物理的な「壁」によって、また、罪を犯した人に対する差別や偏見といった心理的な「壁」によって、お互いの姿が見えにくくなっていると思います。
アートには、こうした「壁」を越えてさまざまな人々をつなぎ、司法の場やマスメディアとは異なる仕方で、犯罪やその回復をめぐるコミュニケーションを可能にする力があると考え、刑務所アート展を企画しました。このプロジェクトで大事にしていることのひとつが、作品を投稿してくれた受刑者一人ひとりに、審査員や運営メンバー、展示を観に来てくれた人からのコメント・フィードバックをお返しすることです。
私たちがこのプロジェクトを立ち上げる以前から、刑務所や拘置所にいる人が表現活動に取り組む環境自体はありました。参加できる受刑者は非常に限られるものの、クラブ活動の中には俳句クラブや短歌クラブ、吹奏楽クラブをもつ刑務所もあります。刑務所主催の「矯正展」という刑務作業製品の展示販売会も各所で開かれています。しかし、受刑者一人ひとりが、自分の表現、自分の作品に対して直接フィードバックを得る機会、作品制作・発表を通して他者とコミュニケーションする機会は、ほとんどありませんでした。
刑務所の外にいれば、自分が書いたもの、つくったものを、ほとんど自由に、即座に発表することができます。たとえばこうやってメルマガを発行して、関心を持ってくれる人に直接届け、フィードバックを受け取ることもできます。しかし刑務所で服役中の人たちにはそれができません。刑務所アート展は、さまざまな方法を組み合わせて、この「壁」を越える表現と対話を媒介しようとするものです。
僕もこれまでの人生で、たくさん間違えてたくさん傷つけてきました。これからもまた間違うかもしれません。痛みと向き合い引き受ける責任が当事者一人ひとりにはあり、しかしその孤独な責任を果たすためには、他者と繋がり、対話することが、どうしても必要です。アートは、その矛盾を可能にする、か細い糸だと思います。他の誰でもない自分自身の物語を懸命に紡ごうとしている、今にもちぎれそうで頼りない糸たちに、あなたの持っている糸をかけて、ことばを交わしてくださると幸いです。
会期中、ご都合のつく方はぜひお越しください(近日、プロジェクトのWebサイトを公開し、サイト上のギャラリーでも作品をご覧いただけるようになります)。
第2回刑務所アート展
会期:
3月22日(木)ー30日(土)11:00 – 19:00
会場:
BUoY 2階ギャラリー https://buoy.or.jp/about/#access
〒120-0036 東京都足立区千住仲町 49-11
東京メトロ千代田線・日比谷/JR常磐線/東武スカイツリーライン 「北千住」駅出口1より徒歩6分、西口より徒歩8分
会期中のイベント:
オープニング・トーク 3/23(土)17:00~19:00
哲学対話 3/29(金)15:30~17:30, 18:30~20:30
(作品を鑑賞して感じたこと、考えたことを共有し、対話します)
クロージング・トーク 3/30(土)17:00~19:00
展示・イベントともに参加無料
デート前、前髪が決まらない!—ことなるさんの日常#3(秦野優)
閒の運営するオンラインコミュニティの日常の一幕を「ことなるさん」のイラストでおすそ分けします。
イラスト・秦野優
恒例の!!!!!!!!!!
前髪決まらない問題!!!!!!!!!!!
もう、CGで作画して欲しい!!!!!!!!
不格好さを取り戻すー執筆日誌#3(鈴木悠平)
2月はほとんどまともに読み書きができなかった。前半、ちょっとのっぴきならない出来事があり、そのことが落ち着いてから今度は子ども二人が立て続けに熱を出し、とにかく色々追われたり疲れたりでひと月が過ぎてしまった。
ただ、振り返ってみて全く書くヒマがなかったかというとそんなことはなく、諸事を言い訳にずるずると「手を動かす」ことを後回しにし、(12月1月には、せっかく、ある程度、生み出せてきていた)「習慣」を、「リズム」を途絶えさせてしまった面も大きい。一度止まってしまえばまた動き出すためにエネルギーが要る。雨が降っても槍が降っても身内が死んでも毎日同じ時間に机に向かい本を読み文を書けと、そうしないと文章の女神は微笑んでくれないのだと、職業作家の書く文章読本にそんな教えが書かれていたが、実際その通りなのだ。
月末最後の数日、ようやく手をまた動かしはじめた。高橋源一郎が毎月選考する掌編コンテストがあり、1月に続いて2月も応募するつもりで書き始めたが、2000字指定の原稿1500字ほどで24時を過ぎてしまって間に合わなかった(あとで加筆してブログに出すことにする)。ただ、そこでようやくまた、身体で書く感覚が戻ってきた。熱は下がったがまだ本調子ではなく眠りの浅い息子をベッドで抱きかかえながら、変な姿勢でカタカタとキーボードを打っていたとき、そうだよ、ものを書くのはこれぐらい不格好な行為なんだよなと思った。
掲示板
閒のメンバーや読者のみなさんから寄せられた制作物や活動報告、イベントお知らせ、気になるトピックや印象的だった出来事、出合った作品の寸評などを掲載します。みなさんの生活創造の軌跡を、ぜひお気軽にご連絡ください。毎月月末までにメールでいただいたものを次号に掲載します。
Youtube・SoundCloudにて「Interval」「behavior」「Hope」を発表(Souma Nakanome)
2024年に入り、2ヶ月が経つ中での体験したことや日々の感覚などを音というかたちにしました。それぞれ、異なる様相になった作品たちです。もしよかったら聴いてみていただけたら幸いです。
Interval
Behavior
Hope
ALS当事者のサイモンさん、ニュージーランドから海を渡って大分での自立生活を開始
全身の筋力が徐々に衰える進行性の病気であるALS(筋萎縮性側索硬化症)のパン・サイモン・ショウセンさんと妻の彩香さんが、ニュージーランドから大分県別府市に移住し、自立生活をスタート。このメルマガも読んでくれている、NPO法人自立支援センターおおいたの仲間、押切真人さんがコーディネートしました。「OBSオンライン」による取材記事と動画が公開されています、ぜひご覧ください。
AGI時代の「生きる」をどう支え合うか(NPO法人OVAコラム)
「『助けて』が受け止められる社会をつくる」ことをビジョンに、インターネット・ゲートキーパー事業などに取り組むNPO法人OVA代表・伊藤さんのコラムです。
・AI規制の議論は、比喩的に表現すれば、楽園への道である「懸け橋」が壊れて人類全体が落ちないようにする議論である。「橋」の安全性だけでなく、それを渡る「個人とその経験」に焦点化した議論も必要があるのではないか。つまり、セーフティネット、福祉の観点である。
閒-あわい-ウェブサイトでこの1ヵ月に書かれた記事
なにか書きたい人、表現したい人、創りたい人、企画・モヤモヤ・問いの持ち込み・相談いつでも歓迎です。
24 病と畑(黒木萌)
わたしの身体はいつから悲鳴をあげていたのだろうか。
TEST 11|散文詩(Souma Nakanome)
描く先 天気でしょう
うす紅に包まる(佐藤和代)
いつかどこかであなたを見かける
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